第14回 こどもの遊びと発達 遊ぶこととモチベーション

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「ヒトの発達とモチベーション」の2回目は「こどもと遊びの発達」です。母親としてあるいは父親としてこどもと遊ぶ時、こどもの遊びや行動に疑問感じることがたくさんあると思います。遊びの中にも私たちのモチベーションを考えるうえで重要なポイントが含まれています。私の経験を交えて紹介していきたいと思います。

 

こどもと遊ぶとき

男の子ならば少し大きくなれば興味を持つおもちゃに「プ○レール」があります。線路やトンネル、陸橋などのパーツを自由に組み立てて電車や汽車を走らせるおもちゃです。大人であっても、いざ作り始めると夢中になってしまうほどの魅力を持っています。実際に遊んだことのある方はご理解いただけると思います(このおもちゃがこども用と限定すること自体が誤りかもしれませんが・・・)。

あるお父さんと男の子が「プ○レール」で遊んでいた時の光景が印象的で忘れることができません。お父さんは男の子を「プ○レール」に誘い、一緒にレールを組み立てて遊んでいました。お父さんは一生懸命レールを繋げ電車が脱線しないようにすべての経路を通ることができるように完成を目指して遊んで(?)います。当然のことながら男の子も一緒ですが、途中からは父さんの方が夢中になってしまっているようでした。男の子は未完成の線路にさらにレールを繋げ無秩序的な世界を作り上げています。時にはお父さんが作った線路をあえて壊して通れなくしてしまうような線路の“つなぎ”も始めています。お父さんは、「おい、そこは違うだろう。こうしなきゃ電車が通れないだろう」といって作り直す有様です。男の子はお構いなしに未完成のレールに電車を走らせ、わざと脱線させて喜んでいます。お父さんのため息が聞こえてくるような状況でした。

もしかしたら男の子“あるある”で共感していただく方も多いかもしれません。しかし、男の子はわざとお父さんの邪魔をしているのではありません。小さなこどもにとって「遊ぶ」とはどのようなことなのか簡単に考えてみることにしましょう。

 

「遊び」の意味

ヒトはある程度、成長すると調和のとれた安定した要素に安心を感じ、「プ○レール」のようなおもちゃでも安定して秩序のある完成品を求めようとしますが、こどもの場合は「遊び」に求める要素が異なっていることが知られています。

J.ホイジンガは「遊び」を「遊びの目的は行為そのものの中にある」あると定義し、遊びそのものが目的であることを記しています。ときに私たちは2~3歳のこどもが公園や保育園の園庭などで大声をあげて走り回っている姿を見ることがありますが、K.ビューラーはこれを「機能快」という考え方で説明しています。これはヒトがもともと持っている機能を使うことに快感を持つという考え方で、声を出せること、走ることができること自体がこの頃のこどもにとって楽しいことであること示唆しています。大人にとってみればその機能が備わっていることは当たり前のことになってしまっているので、これらの行動によって快楽を得ることは少なくなっていると考えられます。

それでは前述の「プ○レール」はどのようなことなのでしょうか。就学前のこどもたちにとって、構成的に遊びを展開することはまだ未成熟でありむしろ無秩序な破壊的な行為に面白さを感じていくことがあります。例えば、偶然、線路につまずいて作ったものを壊しても、その壊した時に偶然起きた音や状況などから起こる感覚に快を感じ再度それを求めて破壊的な行為に至ることや、構成度の低い状況で偶然起きる事態(おもちゃの電車が線路のないところ暴走するなど)に面白さを感じてしまうことが多いようです。年齢とともに遊びの構成度も変化し、結合・配列・秩序を楽しむようになっていきます。子どもにとってみれば遊びは楽しいものであり、決して何かを完成させるために行われているわけではないのです。まさに、こどもにとってみれば遊びへのモチベーションはそれ自体を「楽しむこと」であるといってよいでしょう。

 


「遊び」の発達

「遊び」のもう一つの捉え方として、他者との関わり方から分類する見方があります。ここでは要点のみの話としますが、M.B.パーテンらは遊びの形態をいくつかに分類をして考察しています。初めの頃は「ひとり遊び」が中心ですが、これらは年齢とともに徐々に少なくなっていきます。それとは別に「平行遊び」という同じ空間に友達がいても一緒に遊ばず別々の遊びを展開することもありますが、これも年齢とともに減少してく傾向がありますが年齢を超えて継続することも知られています。

 

3歳頃から「連合的な遊び」という他の子どもたちと一緒に遊び、おもちゃの貸し借りも見られるようになり、5歳頃になると共通した目的や役割分担を持った「協同的な遊び」が展開されるようになっていきます。

遊びも年齢や目的、人との関わり方の変化の中で形態を変えていきます。しかし、「遊び」はこどもにとって単に「楽しむ」だけにあるわけではなく、社会性の発達や身体的スキルの向上に大きく貢献していることも知られています。「遊んでばかりいないで・・・」と言いたくなりますが、こどもには楽しんで「遊ぶこと」は重要であり、その後の発達を支える大切な要素であるとともに、モチベーションの原点となる力を秘めているといってよいでしょう。

 

■筆者紹介

第14回 こどもの遊びと発達 遊ぶこととモチベーション

髙橋一公 Takahashi Ikko

明星大学大学院修了。身延山大学、群馬医療福祉大学を経て2011年4月より東京未来大学教授。2018年4月より東京未来大学モチベーション行動科学部長・同大学モチベーション研究所所長。専門は生涯発達心理学。日本臨床発達心理士会全国研修会委員長(2018年5月まで)、同会埼玉支部副支部長。著書に「生涯発達心理学15講」(編著 北大路書房)、「系統看護学講座基礎 心理学」(共著 医学書院)、「臨床発達心理士わかりやすい資格案内」(共著 金子書房)、「子どものための心理学」(共著 北樹出版)など。その他著書・論文多数。
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