「さん付け運動」で組織を強くする
目次
病院・介護施設における「さん付け運動」の意味
病院・介護施設における「さん付け運動」は、単なる呼称の統一ではありません。
人材不足が慢性化し、現場の負担が増す中で、心理的安全性の向上、人材定着、多職種連携の強化に加え、「休みを取りやすい職場づくり」にも直結する実践的な取り組みとして注目されています。
「さん付け運動」のメリット①:心理的安全性の向上
さん付け運動の最大のメリットは、心理的安全性の向上です。
役職名や職種名で呼び合う文化は、専門性や責任を明確にする一方で、無意識の上下関係を生みやすくします。
その結果、「忙しそうで声をかけにくい」「こんな相談をしていいのか分からない」といった遠慮が生じ、報告・連絡・相談が遅れる原因になります。
さん付けに統一することで、立場に関係なく声をかけやすい雰囲気が生まれ、小さな異変や違和感を早期に共有できるようになります。これは医療事故・介護事故の予防にも大きく寄与します。
「さん付け運動」のメリット②:現場の協力体制の強化
次に重要なのが、人間関係の改善による現場の協力体制の強化です。
職員同士の関係性が硬直している職場では、「迷惑をかけたくない」「頼みにくい」という心理が働き、シフト調整や急な休みの相談が個人の負担になりがちです。
その結果、無理をして出勤し体調を崩す、あるいは不満が蓄積して離職につながるケースも少なくありません。
さん付け運動によって日常的なコミュニケーションが増えると、職員同士の信頼関係が深まり、「お互いさま」という意識が育ちます。
これにより、休みの相談やシフト調整がしやすくなり、結果として働き続けやすい職場環境が整います。
「さん付け運動」のメリット③:多職種連携の質の向上
さらに、多職種連携の質の向上も大きなメリットです。
病院・介護施設では、多様な専門職が連携して利用者・患者を支えていますが、職種間の心理的距離が壁となり、情報共有が滞ることがあります。
さん付け運動は、「職種は違っても同じチームの一員」という意識を育て、意見交換を活性化させます。
その結果、業務の属人化が緩和され、「この人しかできない」という状況が減り、シフトの融通が利きやすくなるという副次的効果も生まれます。
「さん付け運動」のメリット④:若手職員・新人職員の定着
若手職員・新人職員の定着にも効果があります。
早期離職の理由として多いのが、「相談できる人がいなかった」「人間関係に疲れた」という声です。
さん付けで呼ばれる職場では、年次や経験に関係なく受け入れられている感覚を持ちやすく、困ったときに助けを求めやすくなります。
結果として、無理を抱え込まず、休みや勤務調整についても相談できる環境が整います。
「さん付け運動」を進める際のポイント
これらのメリットを最大限に引き出すためには、進め方が重要です。
以下で、進める際のポイントを解説します。
ポイント①:目的の明確化と共有
まず行うべきは、目的の明確化と共有です。
さん付け運動は「仲良くするための施策」ではなく、「安全で、働き続けられる職場をつくるための取り組み」であることを明確に伝えます。
医療安全、離職防止、シフトの安定といった自施設の課題と結びつけて説明することで、現場の納得感が高まります。
ポイント②:管理職・リーダー層への事前説明と合意形成
次に、管理職・リーダー層への事前説明と合意形成を行います。
シフト管理や人員配置を担う立場の職員がさん付け運動の意義を理解していなければ、「休みやすさ」にはつながりません。
管理職同士で目的を共有し、現場の不安や懸念についても話し合っておくことが重要です。
ポイント③:トップ・管理職による率先垂範
三つ目は、トップ・管理職による率先垂範です。
院長や施設長、師長、主任が自らさん付けを実践することで、現場は安心して行動を変えられます。
上の立場の人がフラットな姿勢を示すことが、職員同士の関係性改善の出発点になります。
ポイント④:ルールをシンプルに設定
四つ目は、ルールをシンプルに設定することです。
「原則すべてさん付け」「患者・利用者の前後で呼び方を変えない」など、迷わない基準を示します。
ポイント⑤:短期間での共有と振り返り
五つ目として、短時間での共有と振り返りを継続します。
朝礼やミーティングで、「休みの相談がしやすくなった」「助け合いが増えた」といった実感を共有することで、取り組みの価値が見えやすくなります。
ポイント⑥:定着の仕組みづくり
最後に、定着の仕組みづくりです。
新人研修や管理職研修などの行動指針に組み込み、文化として根付かせることで、さん付け運動は一過性ではなく、働きやすさを支える基盤となります。
おわりに
さん付け運動は、コストをかけずに人間関係を改善し、医療・ケアの質だけでなく、「休みが取りやすい職場」「続けられる職場」を実現する力を持っています。
小さな呼び方の変化を、現場全体の働き方改革へとつなげていくことが、これからの病院・介護施設に求められています。
日本教育クリエイトの研修
日本教育クリエイトでは、研修を通じて定着の仕組づくりでお手伝いすることができます。
どのような研修があるか下記リンクから今すぐご確認ください。
