地域医療構想とは? 病床機能再編とスケジュールなど医療従事者が知るべきポイント解説
目次
地域医療構想とは?制度の定義と目的
「地域医療構想」の基本的定義について厚生労働省によると、長期的な人口構造や地域の医療ニーズの変化を見据え、医療機関の機能分化・連携を進めることにより、良質かつ適切な医療を効率的に提供できる体制を確保するための取り組み、とあります。
ここでは、制度が目指す医療提供体制の効率化・質の向上について解説します。
地域医療構想が策定された背景
地域医療構想が策定された背景には、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる超高齢社会の「2025年問題」の到来により、医療や介護の需要が劇的に増大することが確実視されたことが挙げられます。
また、地域による医療ニーズのばらつきも大きな要因です。人口減少・高齢化のスピードや高齢者の割合は地域により大きな差があります。
そのため、全国一律の整備ではなく、その地域ごとの状況に合わせた体制を整えることが必要になったことも一因です。
*人口動態の変化データ
・2025年問題:団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる 医療・介護ニーズが最大化
・2040年問題:85歳以上の超高齢者層が2040年ころまで増加し続ける
*医療ニーズの変化データ(質・量のシフト)
・高齢者救急の増加:85歳以上の人口増加に伴い、高齢者の救急搬送は大幅な増加が予測される
・在宅医療需要の急増:多くの二次医療圏で、在宅医療を必要とする患者が今後更に増加
(地域によって2050年にかけて60%以上増加)
・医療、介護複合ニーズの増大:単一の疾患治療から、認知症や複数の慢性疾患を合わせもつ患者支援へのシフトが進む
・外来、手術需要の減少:人口減少のため、多くの構想地域では一般外来や大きな医療資源を必要とする手術の件数は減少飲み込み
地域医療構想が解決を目指す課題
地域医療構想は、少子高齢化に伴う医療需要の急増及び変化に対応し、持続可能な医療提供体制を構築することを目指し、以下の3つの課題解決に取り組んでいます。
①病床機能のミスマッチと偏在を解消する
・急性期から慢性期までを曖昧に抱えている状況
・病床数の地域間格差
②高齢化による医療需要の質、量の変化への対応
・団塊の世代が後期高齢者となり、高齢者特有の疾患や在宅医療、介護のニーズが急増している状況
③医療人材の不足と効率的な運営
・生産年齢人口の減少により医療費の財源が圧迫されていることに加え、医師や看護師といったマンパワー不足の深刻化
病床機能報告制度と4つの医療機能
ここでは、地域医療構想の中核をなす病床機能の分類と、各機能能役割を詳しく解説します。
また、医療機関が年1回報告する4つの機能(高度急性期機能・急性期機能・回復期機能・慢性期機能)の定義と違いを明確にします
高度急性期機能と急性期機能の違い
高度急性期機能
・急性期の患者に対して、状態の早期安定化に向け、診療密度が特に高い医療を提供する機能。状態を早期安定させるため、集中治療や診療密度が特に高い高度な医療行為が中心となります。入院期間の目安は数日~1週間程度。
急性期機能
・急性期の患者に対して、状態の早期安定化に向けて、医療を提供する機能。
状態を早期安定させるため、一般病棟での集中的な急性期医療を提供する機能のことです。入院の目安井は1~3週間程度。
回復期機能と慢性期機能の役割
回復期機能
・急性期を経過した患者に対して、在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能。役割は、急性期を脱した患者に対して、「回復と自宅復帰を目指す段階」で、再び自宅や社会で生活できるように支援する期間です。
集中したリハビリテーションや在宅復帰支援を行い、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟などが該当します。
回復期機能
・急性期を経過した患者に対して、在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能。慢性期機能の役割は「安定した状態を維持し、長期的な療養、介護を支える段階」といった違いがあります。状態悪化を防ぐための適切な管理を行い、必要に応じて入退院できる仕組みや、在宅医療、介護施設とのネットワーク構築を担います。これらは療養病床などがそれに該当します。
いずれも住み慣れた地域で安心して生活を続けるために、医療と介護が連携することが「地域包括ケアシステム」の要です。
病床機能報告制度の仕組み
病床機能報告制度とは、一般・療養病床を持つ病院や有床診療所が、自院の病棟が担う医療機能の「現状」と「今後の方向」を年に1回、都道府県へ報告する仕組みのことです。具体的な報告の流れとしては、以下の通りです。
①データ集計:レセプトデータなどを活用して、自院の各病棟における入院患者の状況や提供している医療内容を集計
②システム入力:厚生労働省が運用する医療機関等情報支援システム(G-MIS)を通じて報告
③データ公開と協議:都道府県が報告内容を集計、公表し、構想区域ごとの「地域医療構想調整会議」で地域の医療課題や今後の病床機能の分化・連携について協議
主な報告内容は、各病棟について4区分(高度急性期機能 急性期機能 回復医機能 慢性期機能)から、現状と今後(1年後・数年後)の方向性を1つ選択します。
集計されたデータは、「地域医療構想」の推進に活用され、地域の医療関係者が現状を共有し、不測のない効率的な医療提供体制の構築や病床の機能分化・連携を図るための基礎資料として用いられます。
都道府県による地域医療構想の策定プロセス
ここからは都道府県が主体となって策定する地域医療構想の具体的な手順と内容を解説します。また構想区域の設定から将来の必要病床数の推計まで、策定の全体像を示します。
構想区域の設定と地域の実情把握
設定の単位は、原則として「二次医療圏」を基本とした構想区域の設定方法です。
また、人口動態、高齢化率、将来の死亡原因の予測、患者の流出入など地域特性の分析し、地域特有の実情を把握し医療課題を抽出します。
都市部と地方の違いは以下の通りです。
【都市部】
人口密度が高く高齢化の進行が急速なため、絶対的な医療需要が増加
回復期や慢性期を中心とした病状の拡充や在宅医療・介護連携の強化が課題となる
【地方及び過疎地域】
人口減少と高齢化が先行
将来的な医療需要の減少が見込まれる
医師の偏在が深刻なため、広域での医療機関の役割分担・ネットワークの構築・オンラインでの診療の活用が必須となる
このように、地域ごとに課題の多様性があるのが現状です。
医療資源の偏在や各医療機関の経営状況、地域の交通アクセスなど、構想区域ごとに抱える課題は異なります。こういった実情をデータで可視化し、粘り強く関係者間において協議を重ねていくことが構想実現の鍵といえるのです。
必要病床数の推計方法
必要病床数は、全国統一の算定式に基づいて次の流れで算出されます。
①患者の診療行為の数値化(医療資源投入量)
・入院患者に対する診療報酬の出来高点数(医療資源投入量)を算出
疾患の重症度や状態に応じ患者を4つの機能区分(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)に分類
②医療需要(延べ患者数)の算出
・将来人口推計(年齢階級別)と疾患ごとの受療率を掛け合わせ、構想区域ごとの「1日辺りの入院患者延べ数」を算出
③必要病床数の算出
・算出した延べ患者数を、国が機能区分ごとに設定している目標病床稼働率で割り戻すことで必要となる病床の量を求める
地域医療構想調整会議の役割と機能
構想区域ごとに設置されるものに、地域構想調整会議というものがあります。
将来の人口減少や高齢化を見据え、その地域に必要とされる医療を切れ目なく抵抗できる体制
地域包括ケアシステム)を構築することを目的とし、医療機関の自主的な取り組みを促進する協議の場として、とても重要な役割を果たしています。
ここでは、その目的や参加者、協議内容について詳しく述べます。
調整会議の参加者と開催頻度
地域医療構想調整会議の主な参加者は、幅広い関係者の合意形成を図るため、次の多様な医院で構成されています。
・医療関係者:医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会病院団体などの代表者
・保険者:健康保険組合、全国健康保険協会などの医療保険者
・行政及びその他:都道府県や市町村の担当者、医療機関の管理者、学識経験者
・住民、患者:必要に応じて住民や患者の視点も取り入れます
各都道府県の二次医療圏(構想区域)ごとに開催されます。厚生労働省のガイドラインにおいて、構想実現に向けた議論を停滞させないために、3ヶ月に1回程度の開催が推奨されています。
調整会議で協議される主な内容
地域医療調整協議会では、各地域の医療ニーズの変化、高齢化対応のため、病院機能の現状と必要量の比較、医療機関の機能転換、医療機関間の連携といった地域医療の体制維持に関する具体的で実践的な協議が行われます。
以下に具体的な協議事例をご紹介します。
〇協議事例:
回復期病床の不足解消に向けた転換
ある構想区域が、高度急性期~急性期病床が過剰な反面、リハビリテーションなどを担う回復期病床の不足が、データ比較で浮き彫りになったというケース
〇調整内容:
該当地域のケアミックス病院に対して、急性期病棟の一部を「回復期病棟」(地域包括ケア病棟など)へ転換するよう調整・合意を図る。
*参考 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/23281/siryou2.pdf
医療機関における地域構想への対応
今後、病院や診療所が地域構想にどう向き合い、どのような対応が求められるのでしょうか。
以下に解説します。
自院の機能を見直すポイント
自院の機能を見直して、必要な転換を図るためには、次3つのポイントが挙げられます。
大切な事は、地域のニーズと自院の強みを照らし合わせて行くことです。
①現在の病床機能と将来との比較
・医療需要のデータ分析:
自院のDPCデータや患者の流出入状況を分析
自院がターゲットとする疾患の今後の増減を確認する
・二次医療圏における過不足の把握:
構想区域内での「高度急性期・急性期」の過剰分と「回復期・慢性期」の不足分を把握する
②自院の機能を見直すポイント(強み・弱み)
・患者の「入口・院内・出口」の評価:
入口→高齢者の救急搬送の受け入れ体制は適切かどうか医師の働き方改革への対応
院内(急性期)→高度急性期や急性期として、本当に必要な重症患者にリソースを集中できているか
出口(退院支援)→急性期治療後の受け皿(回復期や在宅医療)への移行はスムーズか
・地域における立ち位置:
自院が「急性期拠点」を担うのか、または地域のセイフティーネットなる「高齢者救急・地域急性期」や「在宅医療など連携」に特化するのかの明確化
③必要な転換とアクションプラン
・病床機能能ダウンシフト(急性期→回復期・慢性期):
急性期病床の稼働率、採算性に課題がある場合は、回復期リハビリテーション病床や地域包括ケア病床への転換を進める
・在宅医療・介護への参画強化:
退院支援を強化して、地域の訪問治療や訪問看護、介護施設との連携を構築する
・地域医療構想調整会議での協議:
報告されたデータをもとにして、地域の医療機関や市町村などの行政と協議を行い、自院の方向性を確定する
他の医療機関との連携強化
地域医療構想への対応として、医療機関の機能分化を進めに不可欠な他の医療機関との連携体制を強化には、「病床機能報告の適正化」「紹介受診重点医療機関の役割明確化」「ICTを活用した情報共有システムの導入」が不可欠です。
具体的な取り組みを以下に挙げます。
①役割の明確化と共有
・病床機能の自主的見直し:
病床機能報告制度を活用し、自院が担う機能を明確化する
(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)
・紹介受診重点医療機関への移行:
地域の核となる大病院は紹介患者の診療に重点を置き、地域のクリニックや診療所は「かかりつけ医」として、日常的な診療を担うといった役割分担の明確化を推進する
②医療機関間の強固な連携体制づくり
・開放型病床の共同利用:
「かかりつけ医」が中核病院の病床を自らの患者の治療のために共同利用できるシステムを構築する
・退院支援と転院調整の円滑化:
入院早期より地域のケアマネージャー及びメディカルソーシャルワーカと連携することで、切れ目のない在宅以降・転移支援を行う
③地域円形パスとICTの活用
・地域連携パスの導入:
特定の疾患(がん・脳卒中・大腿骨頸部骨折)において、急性期から回復期、維持期まで、地域における複数の医療機関で治療計画を共有することで一貫した医療の提供を図る
・電子カルテの共有:
地域医療連携ネットワークを通じて、投薬歴や検査結果など患者の情報を互いに閲覧・共有できる仕組みづくりをすることで、検査の重複を防ぎ、安全かつ効率的な医療を実現する
④地域医療構想調整会議への参画
・関係者との協議:
積極的に「地域医療構成調整会議」に参画し、地域の医療重要や医師の偏在状況を踏まえた協議を行うことで、構想地域内での過不足のない医療提供体制づくりに貢献する。
地域包括ケアシステムとの一体的推進
地域医療構想と地域包括ケアシステムは、いわば車の両輪であり、医療と介護の連携はとても重要です。
高齢者がピークを迎える2040年を見据えて、在宅医療の推進と、医師・看護師・ケアマネジャーといった他職種間の綿密な連携により、地域完結型の切れ目のない医療・介護提供体制を構築することが急務です。
在宅医療においては、急変時や看取りに対応できるよう、24時間の在宅医療提供体制の整備が必要です。
そして、多種職連携で支えることで、重度な要介護状態となっても自宅での生活が継続できるように、医療面でのバックアップを強化します。
地域医療構想の現状と今後の展望
地域医療構想は、団塊の世代が全て後期高齢者となる2025年に向けた病床の機能分化・連携から、2040年を見据えた「新たな地域医療構想」へと移行しています。
ここでは全国の地域医療構想の進捗状況と今後の報告制を解説します。
全国の地域医療構想の進捗状況
厚生労働省のデータによると、着実に全国の病床再編は進んでいます。
ここに進捗状況をご紹介します。
・在宅シフト:療養病床や一般病床からの転換が進んだことで、約30万床文で在宅医療等へ移行
・病床数の減少:2015年から減少傾向にあった総病床数は、2025年の必要病床数(約119.1万床)への適正化が進んでいる
・地域差の課題:全体像として目標に近づく中で、地域ごとの医療ニーズ・医師の偏在は依然として課題
今後の新たな地域医療構想
2026年度以降の展望やスケジュールは、2040年を見据えた新たな包括的な地域医療提供体制の構築へ、
従来の病床調整からフェーズが移動します。
・2026年度:「新たな地域医療構想」を各都道府県が策定し、外来・在宅医療を含めた計画を立てる
・2027年度以降:機能分化・連携・再編が本格化し、医療機関の役割を報告する新体制が導入されます
*厚生労働省の公式情報より、地域医療構想の最新動向を確認できます
https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001300089.pdf
まとめ:地域医療構想の理解が医療の質向上につながる
これまで述べたように、地域医療構想とは単に病床減少を目的としたものではなく、超高齢化社会においても質の高い医療を、効率的に提供し続けるために都道府県が策定する設計図なのです。
医療従事者一人ひとりが、地域の医療を支える重要な担い手です。
人口減少で増大する医療・介護ニーズに対し、地域医療機関同士が連携し病床の役割分担を進めることで、医療の偏在・過不足の解消を目指してるのです。
