組織を強くするモチベーションコラム
人材育成

第6回 自己実現人と複雑人 〜人間観のさらなる広がり〜

成長欲求への注目

前回は、人は経済的な刺激によって動機づけられる存在と見るところから生まれた経済人的な人間観から、人のもつ心理的・社会的な欲求を重視する社会人的人間観への変遷をたどってみました。

ただ、前回も示したように、生産性に関する問題の解決をすべて心理・社会的欲求の充足(前回説明した人間関係論を参照して下さい)に帰することには無理がありました。では、従業員あるいは労働者をどのような存在ととらえればよいのでしょうか。第3回で紹介したマズローの欲求階層説は、その大きな手がかりをもたらすものでした。

マズローの欲求理論では、自己実現に向かう欲求こそが人を成長させるものであり、自己実現欲求の重要性が強調されています。経済的な刺激にしても人間関係からの刺激にしても、それは外から入ってくるものです。しかし、理想の自己に向かおうとする自己実現欲求は、人の内部からわき出てくるものです。つまり、人は本来的に自己の内部から湧き出てくる刺激によって動機づけられ成長していく存在であると見なすことができます。

自己実現人的人間観

組織が人をこのような存在ととらえるならば、たとえば仕事を通じて達成感や成長の喜びといった内的報酬を得ることができるような、仕事の意義ややりがいを重視するマネジメントが大切になります。こうした人間観は「自己実現人的人間観」とよばれ、我が国でも1960年代後半から広く行き渡るようになりました。お金や人間関係よりも、自己の成長や充足感に重きを置く働き方です。これも第3回で紹介しましたが、マグレガーのX・Y理論もそうした人間観を強調するマネジメント思想といえます。

複雑人的人間観

組織は人をどうとらえるかについて代表的な人間観を3つ見てきました。しかし組織心理学者のE.シャインは、各人の能力や仕事の性質、あるいは職場の人間関係などによって、マネジメントの戦略は異なるものであり、一つの人間観にとらわれる必要はないと主張しています。

人は、さまざまな欲求や目標をもった複雑な存在です。シャインの表現を借りれば「複雑人」であり、その欲求や目標もまた、成長段階やおかれた状況によって複雑に変化します。さらに言うなら、各人がもつ欲求や能力、発達段階、仕事の性質や人間関係、あるいは組織のシステムによっても、仕事へのモチベーションや行動は違ってくるでしょう。つまり、複雑人的人間観に立てば、どのようなときでも全ての人に有効なただ一つのマネジメント戦略というものは存在しないということになります。

第5回コラムイラスト

一つの人間観に拘泥しないこと

シャインの考え方にしたがえば、組織に働く人々を一面的な人間観でとらえることは現実的ではなく、状況や人々の成長段階に応じた柔軟な考え方が大切になります。たしかに、経済的な報酬を必要とする人も多くいます。けれども、お金よりもやりがいや働きがいを求める人も、周囲から認められたいという人も、自分の成長につながる仕事がしたいという人も、また多く存在します。

従業員がいま何を求めているか、キャリアを重ねていく中でいまどのような段階にいるのか、会社では能力発揮の機会が与えられているのか-。こうした広い視野でマネジメントを考えていくことが、働く人々の欲求に応え、仕事への満足感や組織へのコミットメントを高めていくことにつながる施策を生み出すといえます。

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