組織を強くするモチベーションコラム
人材定着

第7回 満足感と不満足 〜ハーツバーグの2要因理論〜

いま取り組んでいる仕事がおもしろい、日々の仕事が満足感や充足感をもたらしてくれる−。こんなときには仕事へのモチベーションも高まります。仕事に取り組む中でもたらされる満足感、すなわち仕事満足感ですが、一般にその仕事を通じて本人のもつ欲求が満たされるほど、仕事を肯定的にみる態度が強まり、仕事満足感は高まると考えられます。けれども、本当に、欲求が満たされたときにはいつでも満足を感じるのでしょうか。あるいは逆に、欲求が満たされないときにはいつでも不満足を感じてしまうのでしょうか。

ハーツバーグの2要因理論

皆さんは、満足感と不満足感の関係をどのようにイメージしているでしょう。おそらく1本の軸があって、一方の端に満足感があり反対の端に不満足感があるという、直線的な関係をイメージするのではないでしょうか。つまり、欲求が満たされていれば満足(+)の方向に、満たされていなければ不満足(-)の方向に、1本の軸上を移動するというとらえ方です。

これは仕事満足感についても成り立つのでしょうか。心理学者のハーズバーグはこの考え方に異を唱え、「人々を仕事の上で幸せにする要因と、人々を仕事の上で不幸にする要因とは、たがいに独立した別の要因である」と主張しました。

ハーツバーグを中心とする研究者たちは、「臨界事象法」と呼ばれる方法を用いて、働く人々に面接調査を行いました。この方法では、これまで職場で際立ってよい感情、あるいは悪い感情を引き起こした出来事を思い出してもらい、そうした感情が引き起こされた理由、その感情が本人の態度に及ぼした影響を詳しく語ってもらいます。そして、その内容を予め用意されたカテゴリーに分類し、整理していきます。

満足と不満足は別々の軸上にある

ハーツバーグらの調査から得られた結果は興味深いものでした。強い満足を体験したときの出来事としては「達成」「承認」「仕事そのもの」「責任」「昇進」などがあげられましたが、これらは強い不満足を感じたときの出来事としては多くはありませんでした。

一方、強い不満を体験したときの出来事としては「上司との関係」「同僚との関係」「監督の能力」「会社の政策と管理」「作業条件」などがあがりましたが、これらは強い満足をもたらす出来事としては多くはありませんでした。

この結果からハーツバーグは、満足をもたらす要因と不満足をもたらす要因は別個のものであるという考えを導き出しました。つまり、ある要因が充足されれば満足、不充足なら不満足という1本の軸の上での位置づけではなく、満足と不満足とは、それぞれが独立した軸上にあると考えたのです。

「満足」の軸では、満たされたときには満足感をもたらしますが、満たされない場合でも不満足感を引き起こすことはありません。この「満足-満足でない」に関わる要因を、ハーツバーグは動機づけ要因と名づけました。

一方、「不満足」の軸では、満たされないときには不満足感をもたらしますが、満たされても満足感をもたらすことはありません。この「不満足-不満足でない」に関わる要因は衛生要因とよばれます。

第7回コラム図

満足・不満足の感情をこのように2つの要因から説明するハーツバーグの理論は、「動機づけ-衛生要因理論」あるいは「2要因理論」とよばれます。動機づけ-衛生要因理論では、満足と不満足は一直線上にあるのではなく、表の右に示したように軸が分かれていると考えるのです。

ハーツバーグ理論のもつ意味

先に紹介したように、動機づけ要因には、仕事の上での達成、上司や周囲からの承認、仕事そのもの、責任、昇進など「仕事の内容」に関わるものが含まれます。これらの要因は、それが満たされたときには満足感をもたらします。しかし満たされないからといって不満足感をもたらすことはありません。

衛生要因には、会社が行う政策と管理、監督技術、上司や同僚との関係、作業条件など「仕事環境」に関するものが含まれます。これらは、それが満たされないときには不満足感が生まれます。しかし、それが満足されたからといっても満足感にはつながりません。

満足と不満足の軸が異なる、すなわち両者の次元は異なるものであるということは、満足感につながる要因を充実させなければ、不満足に結びつく要因をいくら取り除いても、それだけでは満足感は生まれず、仕事へのモチベーションも強まらないということです。

たとえば、同じ時にアルバイトで採用されて同じ仕事をしているのに、明確な理由もなくAさんの時給がBさんより10円安いとします。このときAさんには不満が生まれます。Aさんは店長に強く抗議し、時給が10円上がったとします。ではこれでAさんは満足感を強く持ち「よし、頑張るぞ!」と仕事に励むでしょうか。不満は解消するかもしれませんが、『これでようやく不平等がなくなった』と思うだけで、積極的な仕事へのモチベーションは湧いてこないでしょう。

ハーツバーグの主張にしたがえば、職場においては、達成感や責任感のもてる仕事を与える、上司や仲間からの承認を得るといった、満足感につながる要因を充足させる施策が、モチベーションにつながるということになるのです。

ハーツバーグ理論の盛衰

ハーツバーグの理論は新しいものではなく、今から半世紀以上前に提唱されたものです。発表当時は世界のビジネス現場で大きな驚きと新鮮さをもって迎えられ、ハーツバーグは自家用飛行機で世界各国を講演して回ったとのことです。日本にも立ち寄り、日本の産業心理学者たちと意見交換をし、日本料理に舌鼓を打ったという話を、筆者は恩師から聞いたことがあります。

しかし理論には当時から批判も多くありました。たとえば、ハーツバーグは金銭を衛生要因に分類しましたが、これには動機づけ要因ではないかという指摘も多くありました。また、ハーズバーグが動機づけ要因に分類したものの中には、不充足時には不満足を引きおこすものもあることや、衛生要因とされるものの中に動機づけを高めるものがあることなどが明らかにされました。結局、ハーズバーグが分類したようには2要因がきれいに分かれないこと、両要因にはダブりが存在することなどが指摘されています。

こうした批判もあって、現在ではハーツバーグの理論はそのまま受け入れられてはいません。けれども、満足と不満足が別々の軸上にある、すなわち両者は次元が異なるという考え方は、私たちの常識的なものの見方に一石を投じるものであるということができるでしょう。

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