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人材育成

ハラスメント研修講師が教えるハラスメント研修の効果:認識のズレを解消するための対策

目次

ハラスメントの基準が曖昧なのはなぜ?

先日、とある介護事業所様にてハラスメント研修をやらせていただきました。
その際に感じたことを皆様にも共有させていただきます。

知識はどこにでもある

「ハラスメントの定義」「ハラスメントの類型」など、ハラスメントに関する知識はネットを調べれば無料で情報が手に入ります。厚生労働省の資料で学ぶこともできます。では、なぜわざわざハラスメント研修をやらなければならないのでしょうか。
それは、現場での実践につなげるためには、知識の習得だけ手は不十分であり、「基準」や「認識」のズレを修正する「話し合い」の機会を設定する必要があるからです。忙しい日々を送る中で、その時間を捻出するのはなかなか難しいのではないでしょうか。研修という、ある意味強制的にそれを行う機会を設定することで、ようやく「話し合い」を行えるようになるのです。

ハラスメント研修で盛り上がった内容とは?

そんな中、研修でとても盛り上がった内容がありました。
それは、「事例検証」です。
「この事例はハラスメントに該当するか?」
「どうすれば事例ようなハラスメントを防止できたか?」
こういった事例検証をする際には、グループで議論をするわけなのですが、その議論が大変白熱しておりました
なぜそんなに盛り上がったのかというと、「人によって解釈や価値基準がバラバラ」だからです。

ある方は「これはハラスメントではない。なぜなら…」と言い、
またある方は「これはハラスメントでしょう。なぜなら…」と言います。
同じ事例に対して、ハラスメントに該当するかどうかについてだけでも意見が割れます。
でも、これはある意味当然のことではないでしょうか。
今まで歩んできた人生、仕事の経験、身を置いていた環境、人それぞれ違うからです。
しかし、だからといってハラスメントにおいて「解釈や価値基準がバラバラ」ということが許されるでしょうか。

ハラスメント研修をやる意味

ハラスメントは絶対にあってはならない、従業員の人生を左右する重大な問題です。
「感じ方は一それぞれ」で片づけてよい問題ではありません。
だからこそ「話し合い」が必要なんです。
話し合うことで、主観的でバラバラな基準を、少しでも客観的な判断基準に統一していくことができます。
ハラスメントについてのバラバラな価値基準を統一しようとする議論が、ハラスメント研修をやる大きな意味だと感じました。

ハラスメントを恐れて指導できない??

ハラスメント研修の際には、事例を見て「これはハラスメントに該当するか」という検証をします。
ここでは簡易的な事例を見てみましょう。

事例:ハラスメントに該当する?

例えばこんな事例です(簡易版)…
【事例】
仕事のやり方を説明しているのに、全然メモを取らない新人に対して、
「覚えられないんだからメモを取りなさい!」
と大声で怒鳴ってしまった。
この事例は、ハラスメントに該当するでしょうか?

事例に関する議論

研修では、ハラスメントに「該当する」「該当しない」両者の意見が出ました。

●該当しない派の意見:これは業務上必要な指導の範囲だから、ハラスメントとは言えない。
●該当する派の意見:大声で怒鳴るというのは指導の範囲を超えているので、ハラスメントに該当する。

皆様はどちらだと思いましたか?
もちろん、事例がコンパクトすぎるので、これだけでは判断しかねるとは思いますが…。
要素を分解して見てみると、有益な学びを得られるかと思います。

事例に対する解答例と学ぶべきこと

メモを取るように指導することは、業務上必要な指導ではありますし、それが新人の成長のためになると思います。しかし、その指導の仕方に問題があります。
「大声で怒鳴る」というのは、感情に任せた行為であり、指導方法としてはNG行為です。
それが威圧的・強制的と捉えられた場合、「パワハラ」と解釈されることもあるかもしれません。
つまり、指導の方法を変えればこの事例は問題なくなるわけです。

この事例から学ぶべきことは、以下の2つです。
(1)指導内容:相手の成長に必要だと思うものは行うべき。それだけでハラスメントにはならない。
(2)指導方法:感情的ではなく、論理的に。

ハラスメントと言われるのが怖い・・・

一方で、よくこんな声を耳にします。
「ハラスメントと言われるのが怖くて、指導できない…」
お気持ちは痛いほどよくわかりますが、もう少し議論の余地があるのではないでしょうか。
この問題についても、
(1)指導内容
(2)指導方法
の2要素に分解し、それぞれ適切かどうかを議論することで、本当にハラスメントにあたるのか、客観的な基準が見えてきます。
先日受講された皆様も、特にその点において研修の意味を感じてくださりました。

ハラスメントの加害者にならないために

事例を見てハラスメントに該当するかどうかを考えるのも重要ですが、ハラスメント研修に参加される方の関心度が高いことは、「職員とどう接すればハラスメントにならないか」ということだと感じます。

大前提:職員との関係性

ハラスメントうんぬんの前に、大前提として、日常の職員との信頼関係構築が重要である、というのは間違いないことです。
信頼関係が無い間柄ほど、同じ行為でもハラスメントと捉えられやすい、という傾向はあるでしょう。一方で、ハラスメトについては、日常のほんの一瞬の行為が切り取られ、「これはハラスメントだ!」と認定されます。
常に注意していなければならないのか?
気の休まる時がないのか?
と考えるかもしれませんが、そうではなく、もっと本質的な解決が必要です。

コミュニケーションを改善し、ハラスメントを避ける

すなわち、ハラスメントに該当しないようなコミュニケーションを習慣づけることです。
例えば、下記のような場面で皆様はどのように言うでしょうか??実際の研修でも扱っているプチワークです。

【事例】
丁寧に時間をかけて仕事をする職員に対して、「もう少し早く仕事を進めてほしい」という旨を伝えたい場合、どう伝えるか?
◎NG例:「神経質なの?細かいことを気にし過ぎるから仕事が遅いんだよ!」
このように伝えてしまうと、相手を責めている、否定している印象が強く、指導の効果が薄くなってしまいます。もしかしたら「ハラスメントだ!」と言われてしまうかもしれません。

◎GOOD例:「丁寧な仕事で助かるよ!これにスピード感がプラスしたら凄いね!」
これは、ポジティブな言い方に言い換える「リフレーミング」という技です。このように伝えると、相手を責めることなく、肯定しつつ改善点を認識してもらえるので、指導の効果がNG例よりは高くなるかと思います。もちろん、「こんな優しい言い方ではいうこと聞かないよ!」というお声もあるかもしれません。ただ、リフレーミングを含め、コミュニケーションにおいてこのようなことを常に意識しているかどうかが、ハラスメントを考える上でも重要です。

もし自分がハラスメントの加害者になりたくない、と考えるのであれば、日常のコミュニケーションを見直し、そのスキルを向上させるところから始めると、活路が見いだせるかもしれません。

ハラスメント対策で最初にやるべきことは?

ここでは、「事業所として取り組むハラスメント対策」についてお話しいたします。
個人個人がハラスメントへの意識を高めることも重要ですが、事業所全体としてハラスメントに取組むことも大切です。

ハラスメント対策で最初にやるべきこと

ハラスメント対策において、大前提となることは、
「事業所全体の問題として取り組む」ということです。

一職員のみに負担が集中したり、一職員の対応に依存したりしていると、ハラスメント対策はうまく機能しません。まずは事業所全体として「ハラスメントの問題に一致団結して取り組む」という姿勢を見せることから始めなければなりません。その意味では、主要な職員を集めてハラスメント研修を実施するという取り組みは、それ自体が「ハラスメントに対して本気で考えている」という事業所としての姿勢を見せる、よい機会になっているかもしれません。

ハラスメントのチェックリスト

それができたら、次は「今、どこまで取り組みができているのか」、現状を把握する必要があります。

以下、当社の研修でも取り扱う、「パワハラ防止対策チェックリスト」です。
(※厚生労働省 東京労働局 『 職場のパワーハラスメント対策に係る自主点検票 』 を参考に作成)
一部抜粋したものにはなりますが、ぜひチェックをしてみてください。
□職場におけるパワハラの内容について、就業規則等に記載されていますか
□職場におけるパワハラの内容について、明確化された文書を配布、掲示等していますか
□パワハラに関する相談窓口の設置、担当部署、担当者は決まっていますか
□相談対応の手順書の作成、担当者への研修など相談に適切に対応できるようにしていますか
「出来ているかどうか」という観点で見ることも重要ですが、出来ていないものはこれから取り組めばよいのです。

チェックリストから見えてくる「認識のズレ」

問題は、複数人でチェックをしたときに、大体同じようなチェック状況になっているかどうか、ということです。
ある人は4つチェックが入った、しかしある人は2つしかチェックが入っていない、いったいどれが正しいのだろうか・・・。このような状態では、現状が正確に把握できているとは言えませんし、これから何に取り組めばよいのか、適切な計画を立てることもできません。
当社で行う研修でもチェックリストを実施したところ、やはり現状認識にばらつきがありました。
「上層部は十分に対応していると考えていたが、現場には浸透していなかった。」
「現場で発生していることが、上層部に伝わっていなかった。」
など、どうしてもズレは生じてしまうものです。

ではどうすればよいのか。

お互いに議論をし、すり合わせを行い、正しく現状を認識するように努めればよいのです。
この議論も、当社の研修で盛り上がった部分でした。

ハラスメント研修で「認識のズレ」を修正する

今回のコラムでは、ハラスメント研修を実施した時の体験を通して、ハラスメント対策のポイントを解説しました。
ハラスメント対策の第一歩は、正しい現状認識です。

そのためには、お互いの認識をすり合わせる時間を確保する必要があります。
お忙しいこととは存じますが、じっくりと話し合う機会を設けてみてはいかがでしょうか。

当社でも「明日からやることがわかるハラスメント研修」を実施しています。
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医療機関向けはこちら>>

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