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医療機関で接遇マナー研修が必要な理由は?内容やポイントについても解説

医療機関で求められる接遇マナー研修とは?
内容やポイントについても解説

「医療はサービス業という認識を持つべきである」

これは1995年の厚生白書における記述です。今から約30年前であっても、すでにこの認識が広まっていました。
情報化が進み、気軽に病院の情報を得られるようになった現在は、患者様が病院を「選ぶ」時代になっています。ホテルや飲食店などと同様に、医療をサービス業と考え、サービス内容を比較します。「医療はサービス業」という認識は、以前よりも強いものになっていると考えられます。
よって、これからの病院は「選ばれる病院」になっていく必要があります。患者様は、病院の受付対応、医師や看護師等、専門職の方々の対応をよく見ています。良い評判も悪い評判も、SNSや口コミサイトなどを通してあっという間に拡散されてしまうのが今の世の中です。私自身も、新規で病院に通う際には口コミを気にしたりするものです。

選ばれる病院であるためには、「医療はサービス業である」というくらいの意識をもって患者様対応を行う必要があります。丁寧な対応を行い、居心地の良い環境・空間を提供し、ご満足いただいてお帰りいただけるようにしていきましょう。
そのために必要なものが「接遇マナー」です。
今回は、患者様の対応における接遇マナーについて、改めて考えていきたいと思います。

接遇マナーとは?

接遇マナーは、一般的に接客マナーのさらに上位にあるもの、と言われています。
ホテル業で例えると、お客様がホテルに入られた際に「いらっしゃいませ」と言うことは、接客として最低限のあいさつ、つまり「接客マナー」と言えます。表面上繕えるものと言い換えることもできます。
一方、「暑い中お越しいただき、ありがとうございます」「ごゆっくりお過ごしください」等、思いやりやおもてなしの心から来る一言は「接遇マナー」と言えます。接遇マナーは、相手に対する気持ちを表面に出して伝えるという点で、接客マナーの上位にあると言えます。

接遇マナーは心を形にしたもの

接遇マナーは、相手に対して持っている思いやりやおもてなしの心を形にしたものです。
その際に、適切な態度や振る舞いをしないと、心が正しく伝わりません。
接遇マナーは、思いやりやおもてなしの心が相手にしっかりと伝わるように形にする手法と言えます。

接遇マナーの基本原則

接遇マナーには5つの原則があると言われています。これを「基本5原則」といいます。
※接遇マナーの基本5原則については、こちらの記事でも解説しているので参考にしてください。
■基本5原則①:表情
表情は、人の第一印象を決定づける重要な要素です。例えば、いくら丁寧な言葉遣いだったとしても、表情が暗かったらその人に対して良い印象は持てないのではないでしょうか。
マスク越しでも伝わる笑顔を心がける、相手の気持ちに合わせた表情をするなど、表情一つで好印象を与えることができます。

■基本5原則②:あいさつ
あいさつは、人とのコミュニケーションの初歩にして最大のツールです。明るい表情で元気よくあいさつをするだけで、相手からの最初の印象はグンと良くなります。
さらに状況に合わせて「今日も良い天気ですね」「お元気そうで安心しました」などの一言を追加できるとなおよいです。

■基本5原則③:身だしなみ
ユニフォームの乱れや汚れは、相手に不快感を与えるだけでなく、所属する組織全体に対する信頼を損ねることになります。清潔感・安心感を与えるような身だしなみを心がけましょう。

■基本5原則④:言葉遣い
敬語を正しく使うことも重要ですが、相手にやわらかい印象を与える言葉遣いをする必要があります。「恐れ入りますが」などのクッション言葉、「ご確認いただけますか」などの疑問形の依頼など、少しの工夫で相手に好印象を与えることができます。

■基本5原則⑤:態度
相手の目線の高さに合わせる、物を渡すときは相手の目を見るなど、一つ一つの所作・立ち振る舞いが見られています。これらの正しいやり方を覚えて実践することで、お互いに気持ちの良いコミュニケーションが生まれます。

医療機関で求められる接遇マナー

では、医療機関においてはどのような接遇マナーが求められるのでしょうか。
患者様やそのご家族様は、「自分の状況をわかってほしい」「自分を迎え入れてほしい」という「承認」の欲求をもっています。接遇マナーを通じてその欲求を満たすことが、患者様満足につながるポイントです。
逆に、患者様が、「承認の欲求が満たされず、自分のことをわかってもらえなかった」と感じてしまうと、クレームや悪評につながってしまいます。

丁寧なあいさつ

患者様に対して、(状況に応じてですが)笑顔で明るい表情で、相手の目を見て、自分からあいさつをしましょう。あいさつが飛び交っている場所は、外から見ていても気持ちがよく、あいさつする相手のみならず、他の患者様に対してもよい印象を与えます。
あいさつをすることで、「あなたのことを迎え入れています」ということが伝わり、患者様の承認の欲求を満たすことができます。

目配りと気配り

病院という特性上、気分や体調がすぐれない方が多くいらっしゃいます。よって、通常以上にイライラしやすかったり、周囲の出来事に敏感になっていたりします。
待ち時間が長くなってしまっていないか、辛そうにしている患者様はいないかなど、可能な限り様子を目で見て確認し、配慮をしましょう。
そして、何か気が付いたことがあれば、「お待たせして申し訳ありません。あと10分ほどでご案内できますのであと少しお待ちいただけますでしょうか。」「気分がすぐれないようでしたら、横になりますか?」などの声かけをしましょう。

コミュニケーションの工夫

医療機関に勤めていると、ついつい専門的な用語や難しい言い回しをしてしまうこともあるかと思います。しかし、患者様のためにせっかく一生懸命説明をしても、「説明がわかりにくかった」「何を言っているのか理解できなかった」という印象を持たれてしまったら勿体ないですし、意味がありません。難しい内容でもなるべく専門用語などを使わずに、簡単な言い回しで相手に伝えるようにしましょう。
また、クッション言葉などを使ってやわらかい印象を与えることで、患者様の心の壁を取り除き、こちらの話を聞き入れていただく土台を作ることができます。

清潔さと衛生環境の維持

ユニフォームの乱れ・汚れが無いかどうか、チェックしましょう。「しっかり選択しているから大丈夫」ではないです。実際に清潔かどうかも重要ですが、清潔に見えるかどうかも重要です。
また、カウンターや椅子などの設備、ペンやファイルなどの道具についても、衛生管理を徹底しましょう。「空き時間ができたらアルコールでファイルを拭く」といった動きをルーティン化できると、衛生面でよいだけでなく、患者様がそれを見ていた場合、病院への安心感につながります。

多職種間連携

病院では様々な職種の方々が勤務されています。しかし、患者様にとっては、たとえどんな職種の方であっても同じ「病院のスタッフ」です。病院においては特に多職種連携という言葉を耳にすることは多いかと思いますが、しっかりと多職種間で連携が取れていて、スムーズに患者様対応をできることが、患者様満足につながります。

医療機関に接遇マナー研修が必要な理由

選ばれる病院になるために、接遇マナーが重要であることは明らかですが、接遇マナー向上のためには、トレーニングが必要です。トレーニング方法としては、自院内で勉強会を行う、接遇マナーの講座を受ける等ありますが、第三者に研修をしてもらうのが一番おすすめです。第三者に中立的な立場で接遇マナーのレベルを判断してもらい、どこができていて、どこができていないのかを論理立てて説明してもらうことで、スタッフの皆様もそのアドバイスをより受け入れやすい場合が多いです。
また、接遇マナーの研修は以下のようなメリット・効果もあります。

医療スタッフのチームワーク向上につながる

様々な職種の方が接遇マナー研修にご参加いただくことにより、多職種間のコミュニケーションが生まれるようになり、良好な関係の構築につながります。

接遇マナーの向上が患者様の信頼獲得につながる

接遇マナーの向上は、患者様へより快適で安心した環境を提供できるようになり、患者様からの評判や信頼の獲得につながります。もちろん、クレームを防止するという効果もあります。

医療スタッフと患者とのコミュニケーションが円滑になる

接遇マナーは、患者様とのコミュニケーションでもあります。適切な接遇マナーを身に付けることで、ミス・コミュニケーションや誤解を防ぎます。コミュニケーションが円滑に進むことで、患者様対応をより効率的に進めることができるようになります。

医療機関向け接遇マナー研修の主な内容

当社では、医療機関向けに特化した内容の接遇マナー研修を実施しております。

>>日本教育クリエイトの医療機関向け接遇マナー研修はこちら
>>こちらからテキストのサンプルをダウンロードできます

研修では、接遇マナーに関する知識習得から、医療現場の事例を用いたロープレ実践まで、「知っているからできるへ」をモットーに、接遇マナーを体に染みつけていただきます。
研修の主な内容は以下の通りです。

医療機関の役割と患者様心理

・医療機関はサービス業ということを改めて理解する
・患者様や、そのご家族様の心理状態を考える

患者様に安心と信頼を伝える対応

・患者様から信頼されるスタッフとはどのようなスタッフか?を考える
・接遇マナーの基本5原則(表情、あいさつ、身だしなみ、言葉遣い、態度)の基本を学ぶ

患者様対応の実践

・表情の作り方
・あいさつの実践
・身だしなみチェック
・やわらかい印象を与える言葉遣いの練習
・物の渡し方、方向の示し方の実践  など 

まとめ

「選ばれる病院になる」ことにおいて、今や接遇マナーは無くてはならないものです。
地域に根差し、多くの患者様からの信頼を勝ち得ている病院様でも、他院との差別化を図るために「接遇マナーの強化」を打ち出したりしています。
今一度、自院のスタッフの受付対応など、接遇マナーが徹底されているかどうかを見直し、もし不足していると感じた場合は、ぜひトレーニングの機会を作ってみてください。

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